ず、化学系のさまざまな会社にお邪魔して相談しに足を運びました。その中で協力してくれる企業があり、条件を満たす芳香剤の開発に成功しました。
― 売れたのですか?
それが全然売れませんでした。その社長は「もう少ししたら売れるから待ってくれ」というのですが、1か月、2か月たってもまったく売れない。「月1トンは売れるから」というので、原料も大量に仕入れていたのですが、実際は月100キロしか出なかった。パートの人たちにお願いすると赤字になってしまうので、今の当社の役員と一緒に夜中2人で作業してつくっていました。1年たっても売れないので、その企業に「もう下りたいのですが」といったら、「間違いなく売れるからもう1か月だけ待ってくれ」と。私より30歳くらいも年上の方だったので、1か月だけ待ってみました。すると、それから本当に売れるようになったのですね。月1トンどころから700トンまで出るようになったんです。
― それと合併がどう関係しているのですか?
時代はバブル景気のころでしたが、父がやっていたオットセイ製薬のことが気になったんですね。しかし、父とは経営方針が違っていたためぶつかっていたのですが、当時『オットセイ製薬』は不振でしたから、それを立て直そうとその芳香剤で得た利益を負債の返済や設備投資などにつぎ込んでいきました。そんな私の経営手腕を見て、「お前、オットセイ製薬を継がないか」と言ってきまして。それで合併して1つの会社にしたわけです。
― 社名も同時に変えたのはなぜですか?
私が小さいころ、『オットセイ製薬』の創業者である祖父が、小指がしもやけになるとよくオットセイの油を塗ってくれた。運動会や部活で筋肉痛になっているときも塗ってくれる。すると本当によくなるんですね。当時はなぜよくなるのか仕組みはわかりませんでしたけど、それは、カロペプタイドの末梢血管の拡張作用のお陰だったわけです。
小さいころ、カロペプタイドは私にとって万能薬のイメージでしたが、実際には「滋養強壮」「精力剤」のイメージが強く、売れるのもそうした商品ばかりでした。私の先々代も安易に、「オット“ピン”」という名前を商品名に使用するなど、そのイメージを前面に出して売っていたのも確かなのですが(笑)。いずれにせよ、精力剤としてだけじゃなくて、カロペプタイドを女性や子どもたちにも使ってもらえるようにしたいと思い、企業イメージを変える意味で社名変更に踏み切りました。
― 当時は『プロシール』という社名でしたね。
「シール」は英語でオットセイのことなのでその名前にしましたが、「シール屋さん?」「印刷関係の会社ですか?」と間違われることが多くて(笑)。あと自分で「プロシールでいく」と決めたものの、そのあともどうもピンとこないんですね。思い切って変えようと『ヴィタリス製薬』に変えました。